失業保険は介護離職で特定理由離職者になり増える
今、日本が抱えている重大な問題のひとつに少子高齢化があります。
子供が少なくなり、高齢者が多くなる状態ですが、これは家庭内でも、高齢の親の介護をしなければならないという問題につながっているのです。
親の介護をする家族が他にいればいいですが、そうでなければ仕事を辞めなければなりません。
こうして退職することを介護離職と言い、「経済的負担の上昇」「再就職の困難」などを伴うため、大きな社会問題にもなっています。
そして、介護離職は、失業保険(基本手当)の受給に関しても影響を及ぼすのです。
介護離職者は特定理由離職者となり、失業保険が増える
2012年度の『就業構造基本調査』によると、介護離職した人は1年間で10.1万人おり、男性よりも女性の方が多いことが分かります。
これは、共稼ぎの場合、正社員の夫よりパートタイマーの妻が離職して介護した方が家計への影響が少ないとの理由で、そうなっているのでしょう。
高齢化はまだまだピークではなく、介護離職する人も増えていくはずです。
その際、介護離職した人は特定理由離職者となり、失業保険(基本手当)の受給に関し、次のメリットがあります。
- 離職日以前1年間に被保険者期間が6ヶ月以上でよい
- 給付制限がないのですぐに失業保険をもらえる
- 失業保険の所定給付日数が通常より優遇されている
ただし、失業保険は、再就職活動することが受給条件になっているため、介護ですぐに働けない場合は、失業保険の受給手続きができません。
「では、どうすればいいの?」と疑問に思うでしょうが、その際は、受給期間の延長の手続きをすることで、離職の日の翌日から1年間の受給期間に、最長で3年プラスして、合計4年にすることができます。
つまり、失業保険をもらえる期間を伸ばすことができ、離職してから4年以内までなら、再就職活動するときに失業保険をもらえることになるのです。
失業保険の受給期間延長申請書の提出
介護ですぐに再就職できない場合は、失業保険の受給期間を延長する手続きをしなければなりません。
これをしないで離職の日の翌日から1年経過したら、その後、再就職活動するときに失業保険をもらえなくなり、無収入で職探ししなければならなくなるので、忘れずに行いましょう。
30日以上職業に就くことができなくなった日の翌日から1ヶ月以内
お住まいの地域を管轄するハローワーク(公共職業安定所)
・受給期間延長申請書
・離職票
・証明書(介護の場合は住民票等と介護が必要な証明書)
・認印
介護離職ゼロへの険しい道のり
介護離職すると、「収入がなくなる」「社会とのつながりがなくなり孤独となる」「精神的に追い込まれうつ病になる」「再就職が難しくなる」などの大きな問題が生じます。
日本政府は、介護のために仕事を辞める人をなくそうと「介護離職ゼロ」のスローガンを掲げ、ポータルサイトを開設していますが、介護保険制度や介護休業給付の説明、そして、介護サービスや相談先を紹介しているだけなので、根本的な解決には至らないでしょう。
なぜならば、高齢の親の状態は時を重ねるごとに悪くなることが普通で、より介護を必要としていくためです。
失業保険の受給期間延長の手続きをし、介護保険制度、雇用保険の介護補償給付金を利用しながら、今後のことを考えるしかありません。
その間に、介護してくれる人が見つかったり、介護しながら働ける部署に異動となったりすれば継続して働けますが、そういった人は稀です。
方法が見つからない多くの方は離職しなければならず、「介護離職ゼロ」は不可能に近いくらい困難であると実感するでしょう。
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