国民年金基金 メリット・デメリット!脱退方法は?
国民年金は強制加入なので、20歳以上であれば、「若い頃から保険料を納付し、年を取った時、障害を負った時、遺族になった時に、年金給付を受けられる」くらいの知識は誰でも持っているでしょう。
そして、国民年金基金という言葉も、何度も聞いたことがあるのではないでしょうか?
優香さんが長年にわたりイメージキャラクターを務めており、たまにテレビでCMが流れる他、インターネットや新聞で広告され、加入対象者にはダイレクトメールが送られています。
「国民年金基金は一体何なのか?」と疑問を持ちつつも、調べるのが面倒で、未だに理解していない人も多いでしょう。
そこで、国民年金基金を解りやすく解説し、メリット・デメリットについて説明いたします。
国民年金基金とは?
日本の公的年金制度は、第1号被保険者(自営業者等)、第2号被保険者(会社員・公務員)、第3号被保険者(第2号被保険者の配偶者、主婦・主夫)の3種類の被保険者に分かれています。
このうち、第2号被保険者は、給料から算出した厚生年金保険料を労働者と事業主が折半で負担し、これを納めれば、国民年金保険料も納付したものとみなされ、将来、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2つの年金を受け取ることができます。
ある程度、厚生年金保険に加入していれば、この2つの年金で老後も生活できるはずです。
そして、第3号被保険者は、国民年金保険料を納付しなくても納付したものとみなされ、将来、老齢基礎年金を受給できます。
第3号被保険者は、老齢基礎年金のみの支給ですが、そもそも保険料を払っていませんし、また、配偶者の年金もあるので問題ないでしょう。
仮に、離婚したとしても、婚姻期間に相当する老齢厚生年金の半額は、第3号被保険者がもらうことができます。
しかし、第1号被保険者が加入しているのは国民年金のみであり、月額6万5千円弱では生活できません。
そうなると、生活保護を受けるしかないのです。
そこで、第1号被保険者も老齢基礎年金に上乗せできる制度として、国民年金基金が登場しました。
現在、国民年金基金には、それぞれの地域に住む人を対象とした「地域型国民年金基金」と、弁護士や公認会計士など特定の25職種に就く人を対象とした「職能型国民年金基金」の2種類がありますが、基金の設立条件が違うだけで、掛金や支給額は同じです。
国民年金基金の加入条件・加入資格
国民年金基金に加入するためには、次の条件を満たす必要があります。
- 国民年金保険料を納付している20~60歳の第1号被保険者
- 海外に居住している任意加入被保険者
- 60~65歳の任意加入被保険者
- 地域型国民年金基金は、その都道府県に住所を有していること
- 職能型国民年金基金は、その職業に就いていること
国民年金保険料の免除を受けている人や滞納している人、付加年金に加入しなければならない農業者年金の被保険者は、国民年金基金に加入できません。
実際に、自分で国民年金保険料を納めている人のみが国民年金基金に加入できるのです。
国民年金基金と付加年金の違い
国民年金基金は、老齢基礎年金に上乗せする制度ですが、同じ内容の制度として、付加年金があります。
この2つの制度ですが、次のように定められているため、同時に加入することはできません。
国民年金基金と付加年金の関係性
- 付加年金加入者が国民年金基金に加入すると、付加保険料を納付できなくなる
- 国民年金基金加入者は、付加保険料を納付できない
つまり、国民年金基金が優先されるのですが、「じゃあ、何が違うの?」と疑問に思う人もいるでしょう。
まず1つ目の違いとして、掛金の額が挙げられ、付加年金はお得であるものの、月額400円しか納付できないのに対し、国民年金基金は月額6万8千円を上限に自分で選択できます。
国民年金基金に長期間加入して、高額の掛金を支払えば、厚生年金保険加入者と変わらない老後資金を得られるので安心です。
2つ目の違いとして、資格喪失の自由度が挙げられ、付加年金は簡単にやめられますが、国民年金基金は簡単にはやめられないことになっています。
どちらかに加入しようと考えている場合は、この違いをしっかり理解してください。
国民年金基金のメリット
国民年金基金に加入すると、次のメリットがあります。
- 収入に合わせた掛金を選択できる
- 老齢基礎年金に上乗せでき、掛金の額によっては、老後の生活が楽になる
- 払った掛金は、全額が社会保険料控除の対象となり、節税効果がある
- 将来受け取る年金は、公的年金等控除の対象となる
- 給付額が確定しており、物価スライドの適用がないので、物価が下がると実質的な年金額が増える
国民年金基金に加入する最大のメリットは、税制面の優遇であり、掛金も年金もお得です。
したがって、それなりの収入がある第1号被保険者にとっては、魅力的な制度と言えるでしょう。
国民年金基金のデメリット
国民年金基金に加入すると、次のデメリットがあります。
- 途中で脱退できない
- 途中で掛金を引き出すことはできず、将来、年金として支給されるまで待たなければならない
- 給付額が確定しており、物価スライドの適用がないので、物価が上がると実質的な年金額が減る
- 国民年金基金の運営が厳しくなった場合、年金額が減る可能性がゼロではない
- 国民年金基金が破綻した場合、かなり損する
- 年金受給前または保証期間中に亡くなった場合、遺族一時金しかもらえないので損
特に注意が必要なのが、自分の意思で国民年金基金を脱退できないことで、場合によっては後悔する可能性もあるため、申し込む前にしっかり考えましょう。
国民年金基金の資格喪失・脱退方法
国民年金基金は、次のいずれかに該当すると、その資格を喪失します。
- 60歳未満で加入した者が60歳になった時
- 任意加入被保険者が65歳になった時
- 任意加入をやめた時
- 就職して第2号被保険者になった時
- 第2号被保険者と結婚して、第3号被保険者になった時
- 地域型国民年金基金の加入者が、他の都道府県に引っ越した時
- 職能型国民年金基金の加入者が、他の職種に転職した時
- 国民年金保険料の免除・納付猶予を受けた時
- 農業者年金の被保険者になったとき(この場合は、付加年金への加入義務が生じるため)
- 基金が解散した時
- 加入者が亡くなった時
一度加入すると脱退できない国民年金基金でも、上記の資格喪失条件を上手く使えば脱退できますが、そのために引っ越しや転職するのは現実的ではありません。
関連記事
それぞれの立場により、加入している年金制度は異なります。国民年金と厚生年金の仕...
国民年金保険料と厚生年金保険料の納付期間について説明いたします。厚生年金保険料...
国民年金保険料は、社会保険料控除の対象となり、節税につながります。ただし、申告...
国民年金には、上乗せ給付である付加年金が用意されています。一般的にはお得とされ...
第1号被保険者は、自分で国民年金保険料を納付しなければなりません。払わないと督...